高齢者居住への試行2 都会と地方の古民家介護活用

「古民家と高齢者介護」古民家活用セミナー(2012.6.3)日本民家再生協会主催へ参加しました。40人超の参加で、介護業界の方が半数を占めるくらい介護活用への興味の程が伺えました。プログラムは、①古民家を活用した介護施設の運営方針や状況など、関東から3事業者が集まりパネルディスカッション。②西東京市で運営する 『和のいえ櫻井』 を実際に見学※当日介護業務は休み。

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上図は都会と地方という立地に沿って古民家の介護活用されている『和のいえ櫻井』と『すずかけの家』の概要を簡単にまとめたものです。
パネルディスカッションから、それぞれの施設について感じたことを少々記します。※下記の施設名をクリックするとサイトへ飛べます。

都会型 古民家介護活用 『 和のいえ櫻井

貴重な都会の古民家を如何に風情を崩さず介護施設として活用できるか?という命題に対してリスクを極力負わないバランスのとれた事業運営だと思いました。
  1. 事業運営者はまちづくり的感覚のある建築士。 ロビーの様々な椅子はメーカーのショールーム的利用(宣伝)として提供してもらったり、蔵の漆喰左官修復には左官職人の実物訓練場として利用。庭の花は近所の方が好きで資材ごと持ち込みの管理をしている。また、児童と高齢者のコミュニケーションから昔流の「しつけ」や「うやまい」を誘発する。このようにコストを掛けず、皆が益を得る仕組みは、建築設計者で、かつコミュニケーションに長けている方だからこそできるのでしょう。
  2. 都会人が持つ古民家のイメージを十分に生かしている。都市部にもかかわらず、古民家、蔵、屋敷林、庭、ツリーハウスなどがあり、近隣のなかでは特異な場所となっている。商空間的に言うならば、昔風情が現存するアミューズメント性が高い施設で、レストランやカフェ、ギャラリーとして人気スポットになるようなポテンシャルを持っており、都会に暮らす者にとっては、懐古的なお洒落さや非日常性を体験できる。
  3. 利用者の身体機能からみる古民家のハンデをあえて引き受けない運営。都会であるが故に離職率の高い介護職から、有能なスタッフを抱えるためには、重度ではない要介護者の引き受けによる介護者ストレスの軽減と時給ベースを上げる経営努力が必要になる。古民家の問題となり得る段差や畳座自体をデイサービス(通所介護)に限定することにより身体機能の訓練装置として位置づけているのでないでしょうか。 

地方型 古民家介護活用 『 すずかけの家

過疎・高齢化が進む地方のなか、ダイバーシティ(人材や手段の多様さ)的環境がある場所での事業運営で、山間地域の生き残りモデルになり得ると思いました。※しかし、首都近郊というアドバンテージが大きいかもしれません
  1. 事業運営者は福祉・介護の熟練者。地方であるがゆえに、利用者(要介護者)が選択できる事業者(介護者)の数が少ない。よって、事業者は要介護程度を限定することが難しく、すべて受け入れる必要性があるのではないでしょうか。その分、事業運営者は介護に関して幅広く精通していなければならない。運営主の宮内眞さんの「介護はキレイ事では済まない」という言葉の裏付けは本人の雰囲気と地声の大きさで示されていました。
  2. 古民家での生活は日常のこと。地方では、古民家だからということで特別に扱われることは無いのではと思います。古民家の残存率は都会よりも高いので珍しさがないどころか、日常の生活の場であるケースが多いかもしれません。
  3. 老若男女のコミュニティが多様。アートビレッジやシュタイナー学園、トランジション運動があるなど、過度の貨幣経済に頼らないボランタリー精神を備えた当事者意識の高い住民が比較的多くいることからだと思いますが、介護スタッフが副業?で本を出版するなど、雇用形態が柔軟でユニークです。
そもそも、古民家が高齢の要介護者にとって有益であるか定量的に示せるものではありません。しかし、現在利用している方(古民家が実家であったり、戦時中の疎開先の住まいであった)には会話のきっかけになる材料を与えることがしばしばあるようです。これら都会型と地方型の古民家を活用した介護施設はどちらも成功している例だと思います。今回、見学をしていませんが地方型の『すずかけの家』に興味を強 くいだきました。日本人の生活の未来が潜んでいそうな気がします。また、生活(寝泊り)に使う古民家のこれからの再生には、健康の視点から温熱環境を整える必要があると思いました。


以下は見学した『和のいえ櫻井』の写真です。

メイン(主屋)施設では平日に通所介護と学童保育を行い、週末はスペース貸し
メイン施設ロビーで高齢者のほとんどが過ごす
リビングから畳座室を見る※手前の段差は150mm程度
構造用合板による耐震補強壁※既存復帰も可能な工法
蔵をイベントや左官職人の実地訓練の場として活用
ツリーハウス

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