真夏の下町住宅 外壁・屋根温度は50~70℃

日差しの強さが気になるシーズンの到来です。注意しなければいけないのは、何も女性ばかりでなく、住宅の外皮である外壁や屋根もというのが今回のテーマです。

昨年(2011年)、晴れ(やや薄曇り)の8月18日午後3時20分頃に東京都台東区下谷に建つ建物を西南西方向から赤外線サーモグラフィカメラで撮影しました。
【気象観測所(東京:大手町)の同日午後3時のデータは気温:34.8℃、湿度:54%、全天空日射量:2.25MJ/㎡、風向・風速:南南東 4.7m/s ※九日前から雨のない平均気温30℃超が続き2011年で最も平均気温が高かった日

  • イ:金属瓦〈灰肌色〉屋根/改修(木造住宅)
  • ロ:モルタル塗装〈薄灰色〉外壁(木造住宅)
  • ハ:いぶし瓦屋根(木造住宅)
  • 二:モルタル塗装〈白色〉(寺院塀)
  • ホ:鋼板スパンドレル〈海老茶色〉外壁/RC壁のうえに張る(RC造ビル)
「イ」「ロ」一般的に日差しからの熱吸収が少ない色は反射率の高い白やシルバーですが、(背後の材料を含む)熱容量の差なのかサーモカメラの精度なのか、「ハ」いぶし瓦や他の濃赤の屋根と温度の傾向はあまり変わらない。また「ホ」の鋼板外壁の温度がそう高くはない。夏のことを考えると屋根はシルバーという選択をしてしまいがちですが、もっとサーモカメラによる実態検証を増やしてみる価値があるようです。「二」白色の特性が出ていると考えられます。


  • イ:鋼板瓦棒葺〈灰汁色〉屋根(木造住宅)
  • ロ:鋼製折板〈白色〉外壁(木造住宅)
「イ」同じ屋根部でもここが高温なのは、真横にある白い壁面からの反射光による熱も加わったからと考えます。「ロ」白色系の鋼製折板は、日射による熱吸収が少なく薄肉鉄板なので熱容量も少ないことから50℃という温度なのでしょうか。※埼玉県三郷市や吉川市に大規模な戸建て分譲地があり、それはそれは窯業系サイディングの展示場みたいな場所で、色や表面の起伏の違いによる温度を測定し、レポートするのも面白いのではと思っています。


  • イ:イチョウ(街路樹)
  • ロ:弾性アクリル左官仕上〈胡桃染色〉外壁/改修(RC造ビル)
  • ハ:施釉タイル〈薄灰色〉外壁(RC造ビル)
  • 二:店舗テント〈濃緑色〉庇(RC造ビル)
「イ」葉面気孔開放により蒸散活動をする樹木(イチョウ)は40℃超ですが、冷却効果があるので屋外では樹木の傍が涼しいということがわかります。しかし、強い日差しが続くと水不足によるストレスが起こり、蒸散を止めてしまうので、地植えであっても適切な水遣りが必要です。「ロ」「ハ」の温度が高いのは、縦横の向きは違えど入隅に熱が集まりやすいうえ反射熱も加わるからでしょう。「二」テント庇は濃緑で太陽光を吸収しやすい色になるうえ、テント内部の空気が相当熱せられています。テント生地自体薄く熱容量も極めて少ないので、上部に熱気抜き用の処理を施せば温度は下がると思います。

このように夏の外壁や屋根の温度は50~70℃にもなります。室内もそれぞれ実測してみたいものですが、断熱のない建物は蒸し風呂状態で熱中症の危険性が極めて高いことやエアコン冷房の電力消費量がかさむであろうことが容易に想像できます。

簡単に材料メーカーのカタログデータを鵜呑みにせず、経年劣化がある実物の測定結果を噛み砕くことで材料選定の視点が増えると思います。当然、裏に設ける断熱(材)のコントロールや巷で騒がれている省エネ・節電にも関わり、様々なアイデアへとつながる可能性があるでしょう。

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